関西大学システム理工学部情報通信工学研究室

P2Pを利用したコンテンツ配信

  一般家庭のブロードバンド化に伴い、リッチコンテンツと呼ばれる大容量コンテンツの配信が増加している。 それらの多くはリアルタイム再生を可能とするストリーミングを用いることが多い。 近年ではP2Pネットワークを利用してストリーミング配信を行うP2Pストリーミング技術が注目されている。
  従来のストリーミング配信はクライアント・サーバ型で行われており、サーバの帯域幅が配布可能量を決めていた。 そのためユーザが増加すると、サーバの負荷が増大し、各ユーザが使用可能な帯域幅が限定され快適なコンテンツの再生が困難となる。 配信動画のビットレートを下げ、サーバへの通信の負荷を低減する手法もあるが、それではコンテンツの品質が低下するため、ユーザを満足させるサービスとならない。 しかしP2Pネットワークを用いることで、システム全体の帯域幅が増加するため、サーバの負荷を軽減することが可能となる。 また配信動画のビットレートを下げることなく多くのユーザにコンテンツの配布が可能となるため、ユーザは快適なコンテンツの再生が可能となる。

 ピア間のアップロード公平性

  P2Pライブストリーミングでは各ピアのアップロード量に差が生じ、公平性が保たれていないことが問題点として挙げられる。 これはピア間でコンテンツの再生に時間差が生じているためである。その再生の時間差を生み出す要因として、 各ピアのアクセス帯域ならびにコンテンツサーバからの伝搬遅延に差異があることが挙げられる。 本研究ではアップロード量の不公平に着目し、各ユーザの公平性を保つ方式について研究を行っている。

 P2PキャッシュによるISP間トラヒック制御

  近年、各家庭のブロードバンド化や常時接続、インターネット料金の定額課金化を背景に、P2P ソフトウェアによるトラヒック量が急激に増加している。 P2Pトラヒックは全トラヒックの50〜80 %を占めるまで増加し、さまざまな弊害を生み出している。 P2Pトラヒックは一部のヘビーユーザが帯域を大量に使用し、P2P を利用していないユーザにも遅延や接続切断を起こす他、IP 電話などQoS(Quality of Service)が必要なトラヒックに影響を与える。 P2P コンテンツ配信システムでは、アプリケーション層で構成されるピア間の隣接関係(オーバレイネットワーク)に実ネットワークの構造があまり反映されない場合があり、 ISP 間トラヒック増大を招くという問題点が指摘されている。
  ISP間トラヒックを低減する施策として、ISPがキャッシュを導入する手法が提案されている。このキャッシュに格納されたコンテンツは自ISPのピアにのみ提供される。 ISP 間のルータにおいてISP 外への接続要求を検知すると、その要求を遮断し、要求をキャッシュに誘導、キャッシュからコンテンツを提供する。そのためISP 間トラヒックの削減が期待出来る。 本研究ではISP間トラヒックに対しP2Pキャッシュが与える影響について調査、検討を行なっている。
   
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